家庭内在庫量に応じた「買い足しタイミング」の違いを可視化
同じ炭酸飲料カテゴリでも、家庭内在庫量が少なくなるとすぐに買い足す世帯と、ある程度まとめ買いしてからゆっくり消費する世帯が存在することが分かりました。動的個人モデルを用いることで、こうした消費者異質性をID単位で捉えられるようになります。
分析事例|ID-POSデータ分析 × 動的個人モデル
ID-POSデータ分析と動的個人モデルを組み合わせることで、家庭内在庫量や消費ペースを推定しながら、CRM・OnetoOneマーケティングで活用できる「購買タイミングスコア」を構築した事例です。
CLIENT & CHALLENGE
全国で店舗展開を行うドラッグストアチェーン様では、会員向けアプリやポイントカードを通じて豊富な ID-POSデータを蓄積していました。しかし、カテゴリ別の販促やクーポン配信は週次のチラシ起点が中心で、 「誰に・どのタイミングで打つべきか」という観点でのOne to Oneマーケティングには十分に踏み込めていませんでした。
特に炭酸飲料カテゴリは、まとめ買いと単品買いが混在し、家庭内在庫量の違いによって購買タイミングが大きく変わるカテゴリです。 従来のRFM分析や単純な購入間隔の平均値では、こうした消費者異質性をうまく捉えきれないという課題がありました。
SOLUTION
MyStoryでは、マーケティング・サイエンス分野の研究で用いられている「動的個人モデル」の考え方をもとに、 来店行動と炭酸飲料カテゴリの購買生起行動を同時に説明する統計モデルを構築しました。 一般状態空間モデルの枠組みを用い、粒子フィルタによって顧客ごとの状態を日次で推定しています。
モデルでは、チラシ・価格・天候といった外部要因だけでなく、家庭内在庫量や消費量を潜在的な変数として扱い、 「今この世帯の冷蔵庫にはどれくらい在庫がありそうか」「在庫が多いとき/少ないときで消費ペースが変わるか」 といった情報を推定可能にしました。
RESULT
動的個人モデルに基づく配信群で、来店頻度が向上。
炭酸飲料カテゴリ全体で前年同期比の売上を改善。
「家庭内在庫量が減ったタイミング」を狙った配信で利用率が向上。
※いずれもコントロール店舗群との比較による相対改善
APPROACH
会員ID別に購買履歴を整形し、「いつ・誰が・どの炭酸飲料を・いくらで・いくつ買ったか」を軸に分析テーブルを構築。ID-POSデータ分析の目的を、来店行動と購買タイミング(購買生起)の両方を説明することに置きました。
一般状態空間モデルをベースに、家庭内在庫量や消費量を潜在変数として扱う動的個人モデルを構築。粒子フィルタを用いて「来店のしやすさ」や「炭酸飲料カテゴリの購入しやすさ」が日次でどのように変化しているかを、顧客ごとに推定しました。
推定された家庭内在庫量や購買生起確率を、会員ごとのスコアとしてCRM基盤に連携。「そろそろ在庫が減っていそうな顧客」や「販促反応が高まりやすい顧客」を抽出し、One to Oneクーポンやアプリ内バナーの配信ロジックに組み込みました。
INSIGHT
同じ炭酸飲料カテゴリでも、家庭内在庫量が少なくなるとすぐに買い足す世帯と、ある程度まとめ買いしてからゆっくり消費する世帯が存在することが分かりました。動的個人モデルを用いることで、こうした消費者異質性をID単位で捉えられるようになります。
従来の静的なセグメントでは見えづらかった「一時的にプロモーション感度が高くなっている期間」や「価格反応が鈍っている期間」を、日次レベルのパラメータ推定により把握。短期的なキャンペーン設計に役立つ指標として活用しました。
来店するかどうか(店舗選択)と、来店した日に対象カテゴリを購買するかどうか(購買生起)を同時にモデリングすることで、「来店はしているのに買っていない」ケースと「そもそも来店していない」ケースを分けて評価できます。これにより、施策の打ち手を来店施策とカテゴリ施策で整理しやすくなりました。
FOR WHOM
MyStoryでは、学術研究レベルの動的個人モデルを、実務で使いやすいCRM指標として実装するところまで一気通貫でご支援します。まずは貴社のID-POSデータの状況や、実現したい施策イメージをお聞かせください。