参入予定の市場でどれだけシェアを獲得できるか精緻に予測したい。この難題に対し、企業は従来の調査や直感ではなく、より科学的なアプローチを求めるようになってきました。そこで近年注目されているのが、微分方程式に基づく「ロトカ・ヴォルテラ(Lotka–Volterra)モデル」と、消費者選好を可視化する「コンジョイント分析」および「ロジットモデル」を組み合わせたマーケットシェア予測手法です。
ロトカ・ヴォルテラ方程式は本来、生態学における種間競争を表現するためのモデルですが、これをマーケティング領域に応用することで、ブランド間の競争によって生じるシェアの時系列的な変化を定量的に捉えることが可能になります。
このモデルでは、各ブランドのシェア変化が「自己増殖項」と「競合他社との相互作用項」で記述されます。つまり、「自社ブランドが自然に成長する力」と「他社との競争で影響を受ける力」の2つの力学を数式で明確に記述できるのです 。
このような構造により、例えばある新商品の参入が市場全体のバランスにどう影響するか、特定のキャンペーンがシェア獲得にどれほど貢献するかなどを、動的に予測することが可能になります。
ロトカ・ヴォルテラモデルは、初期のブランドシェア(初期条件)を与えなければ時系列予測ができません。その際、極めて有効な手法となるのが「コンジョイント分析」です。
コンジョイント分析は、消費者が製品のどの要素(価格、機能、ブランド名など)にどの程度の効用(価値)を見出しているかを測定する方法であり、個々の属性の「効用値(part-worth)」を定量化できます 。
さらに、得られた効用値をもとに、ロジットモデルを適用することで、各ブランドが選ばれる確率、すなわち「選択シェア」を理論的に導出することができます。これにより、マーケット参入直後のブランドシェアを、実際の購買データに依存せずにシミュレートできるのです。
時系列シェア推定では、ロトカ・ヴォルテラ方程式の係数(ブランド間の競争強度、自己増殖率など)を正確に推定することが成功の鍵となります。しかし実務では、週次や月次などマーケティング施策に即した時間単位でモデルを離散化して実装する必要があります。
その際、係数推定の安定性を高めるためにスムージング処理(移動平均など)を行ったり、短期間での過剰反応を防ぐためのパラメータ制約を加えるケースもあります。モデルの自由度と実務への適合性のバランスが、導入効果を左右します。
こうした高度な理論に基づくモデルを、実務で誰もが使える形に落とし込んだのが、MyStoryが新たにリリースした分析ソリューション『ダイナミックシェア』です。
【参考】『ダイナミックシェア』の紹介ページはこちら
『ダイナミックシェア』紹介ページ
『ダイナミックシェア』は、次の3つの特長を備えています。
これにより、従来の「過去データに基づく静的な売上予測」ではなく、「将来の市場構造そのものを描き出す動的予測」が可能になります。
市場は静的ではなく、生き物のように日々変化しています。だからこそ、マーケットシェアを“点”でとらえるのではなく、“線”として読み解くことが求められます。
ロトカ・ヴォルテラモデルで時系列の競争構造をとらえ、コンジョイント分析とロジットモデルで顧客の選好と選択行動を数式化する。こうしたアプローチにより、マーケティングは感覚や経験から、より科学的・再現的な領域へと進化しつつあります。
MyStoryでは、こうした理論と実務の架け橋となる「ダイナミックシェア」を通じて、企業のマーケット戦略を強力に支援します。市場参入や競合との競争において、一歩先を読む力を手に入れたい方は、ぜひご相談ください。