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用語解説2025/05/02キーワード: レーティング、評価、レコメンデーション

ELOレーティングとは何か?~スポーツやビジネスに活きる「実力の見える化」手法~

ELOレーティングとは何か?~スポーツやビジネスに活きる「実力の見える化」手法~

はじめに:なぜ「ランキング」ではなく「レーティング」が必要なのか?


スポーツ観戦やゲームが好きな方なら、「世界ランキング◯位」や「勝率ランキング」など、順位付けに触れる機会は多いでしょう。しかし、「ランキング」だけで実力を正しく評価できるのでしょうか?たとえば、ある選手が格下ばかりに勝ってランキング上位にいるとします。一方で、別の選手は強豪とばかり対戦し五分の成績。その場合、単なる勝敗数だけで「どちらが強いか」は判断できません。

こういう時には「レーティング」の考え方が役に立ちます。飲食店予約サイトでレストランを調べる際に、「このお店は評価値が3.5を超えているから良さそうなお店だ」と、予約するお店を決めた経験がある方も多いのではないでしょうか。そうです、レーティングとは「何らかの基準」をもとに人やサービスなどに評価値をつけることを言います。

では「何らかの基準」はどのような種類があるのでしょうか。単純に複数の人の評価値の平均を取るもの、重みづけするもの、数理アルゴリズムを用いるものなど様々な基準によるレーティングシステムが社会実装されていますが、有名且つ広く使われているものとして「ELOレーティング」があります。

もともとチェスの世界で考案されたこの手法は、勝敗の内容をもとに選手の「実力」を数値で見える化する仕組みです。近年ではサッカー、将棋、eスポーツはもちろん、ビジネスの世界でも応用されています。本コラムでは、ELOレーティングの仕組みやメリット、さらにビジネス活用の可能性までやさしく解説します。

ELOレーティングとは? ~勝った相手の強さで評価が決まる~


ELOレーティングは、チェスプレイヤーの実力を評価するためにハンガリー出身の物理学者アルパド・エロによって考案されました。大きな特徴は、「誰に勝ったか」「誰に負けたか」を重視する点です。勝敗でなく期待値とのズレで評価するアルゴリズムで、具体的には以下のように考えます。

・強い相手に勝つと大きく加点
・弱い相手に勝っても加点は小さい
・逆に、格下に負けると大きく減点

これは、ELOが常に「期待値」と「実際の結果」のズレを評価しているからです。たとえば、「勝つ確率80%」と予測された試合で本当に勝てば評価はあまり変わりませんが、「勝つ確率20%」だった試合に勝つと、大きく評価が上がります。

数式が語る、シンプルで合理的な仕組み


「数式」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、ELOの計算は実は非常にシンプルです。

レーティング更新式(基本形

新レート = 現在のレート + K × (実際の勝敗 - 期待勝率)

ここでの「K」は変動の幅(例:32など)、「実際の勝敗」は勝てば1、負ければ0、「期待勝率」は相手とのレート差から計算されます。

例:実力伯仲の対戦で勝てばどうなる?

・自分のレート:1500
・相手のレート:1500
・勝つ確率(期待勝率):0.5

・勝った場合:1500 + 32 × (1 - 0.5) = 1516
・負けた場合:1500 + 32 × (0 - 0.5) = 1484

このように、勝敗によってレートが動き、実力に応じた位置にだんだんと落ち着いていきます。

スポーツ界やビジネスにおけるELO活用例



サッカー:FIFA公式ランクよりも実力を反映?

実際、FIFAランキングがしばしば批判される一方で、ELOベースのサッカーランキングは「実力をより正確に反映している」と評価されることが多いです。たとえば、強豪とばかり戦っているチームがFIFAランキングでは上がらない一方で、ELOではしっかり評価されます。このような「納得感」のある数値が、ELOの大きな魅力です。

参考までに、以下にサッカーのFIFAランキングと、ELOベースのランキングを掲載しているサイトのリンクを貼っておきます。

- FIFAランキング:FIFAランキングの掲載サイトを見る
- ELOベースのランキング:ELOベースのランキングの掲載サイトを見る

興味深いことに、本コラム執筆時点では(2025年5月2日)、FIFAランキング1位は2022年カタールW杯王者のアルゼンチンですが、ELOベースのランキング1位は現・欧州王者のスペインとなっており1位が異なります。
これは、スペインが列強うごめくヨーロッパ連盟所属であり、ネーションズリーグなどで普段から強豪国との対戦が多いこと、2024年に開催されたUEFA欧州選手権でクロアチア、イタリア、ドイツ、フランス、イングランドなど並み居る強豪を打ち破って優勝を遂げたことなどが一因としてあるでしょう。

ビジネスにも応用できる?「実力評価」の新しいかたち

ELOレーティングの考え方は、スポーツやゲームだけにとどまりません。たとえば、営業担当者の「商談力」評価にも活用できるでしょう。以下はその例です。

・商談の難易度(クライアントのELO)をもとに、勝ち取った案件で評価が変動
・難易度の高い企業(例:新規企業や予算の少ない企業など)から受注した場合、レートが大きく上昇
・難易度の低い案件(例:レギュラー契約のように受注がほぼ決まっているもの)ばかりを取っても、評価は伸びにくい

このように、単なる成績ではなく「質」まで加味した評価が可能になります。

ほかにも、社内研修やAIによるマッチングにおいても

・社員の実力測定
・マッチングアルゴリズム(人材とプロジェクトの適合度評価)
・ゲーミフィケーション施策

など、応用範囲は拡大中です。

ELOは「動的」な実力評価が可能


ELOレーティングの本質は、「対戦によって互いの評価が更新され続ける」という動的な仕組みにあります。ランキングのような「固定的な順位づけ」では見えにくい変化や傾向を、ELOはリアルタイムで反映します。
企業が競争力を見極めるうえでも、マーケティングの施策評価においても、「本当に意味のある評価軸」が必要な時代。ELOの考え方は、そんな課題に対する一つのヒントになるはずです。

おわりに:実力の見える化で、意思決定の精度を上げる


私たちMyStoryは、企業や組織の意思決定を支えるデータ分析ソリューションや、経済学・行動計量学・消費者行動理論などの専門知見をもとにしたビジネスコンサルティングなどを提供しています。本コラムにてご紹介したELOレーティングのように、「本当に意味のある評価軸」を設計し、納得性の高い施策設計や成果評価ができるようサポートします。
「従業員の能力や頑張りを正しく測れていない気がする」、「レーティングの考え方をもとにした精緻なレコメンデーションシステムを実装したい」、そんなお悩みを感じている企業の方は、ぜひ一度ご相談ください。

執筆者
作田
株式会社MyStory マーケティングチーム コミュニケーションG
MyStoryのコーポレートサイトや広報・PR関連のコンテンツの企画を担当
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